<評価>
• 総合評価:★★★★☆
→ 驚きの展開と巧妙な伏線回収が光るミステリー作品
• 読みやすさ:★★★★☆
→ 軽妙な文体でテンポよく進み、一気に読める
• ストーリーの魅力:★★★★☆
→ 予想外の展開と功名な構成が読者を引き込む
• 登場人物の魅力:★★★☆☆
→ 中心的なキャラクターは少ないものの、それぞれがあまり深掘りはされない
• 考えさせられる度:★★★☆☆
→ 人間の思い込みや先入観について深く考えさせられる
<レビュー>
はじめに
皆さん、ミステリー小説で「えっ、そういうこと!?」と驚かされた経験はありますか? どんでん返しが好きな人にとって、この瞬間は何よりの醍醐味ですよね。今回ご紹介するのは、歌野晶午さんの『葉桜の季節にきみを想うということ』。タイトルからは穏やかな恋愛小説のように思えますが、中身はそんな生易しいものではありません。
本格ミステリーの要素が詰め込まれ、さらに読者の思い込みを巧みに利用した仕掛けがある作品です。特にラスト50ページでの怒涛の伏線回収には驚かされました。
ただ、終わり方には少し賛否が分かれるかも? そんな点も含めて、この本の魅力をレビューしていきます!
伏線の張り方が秀逸!
この本の最大の魅力は、物語のあちこちに散りばめられた伏線の巧妙さです。最初に読んだときには何気なく流してしまうようなセリフや描写が、実はすべて計算され尽くしたもの。最後の50ページでそれらが一気に回収される瞬間は、まさに「してやられた!」という感覚になります。
特に、キャラクターの何気ない言動が、後から意味を持ってくる構成は見事。読者が「当たり前」と思い込んでいることを巧みに利用し、その常識をひっくり返すような展開が仕掛けられています。読み終えた後にもう一度最初から見直すと、「ここに伏線が…!」と気づく箇所が多々あり、二度楽しめる作品です。
キャラクターはクセが強め
本作の登場人物たちは、個性的ではありますが、どこか掴みどころがない印象もあります。主人公の成瀬将虎は、筋トレ好きの元探偵というユニークな設定。しかし、探偵としての活躍を期待すると、少し拍子抜けするかもしれません。どちらかというと、物語の狂言回し的な立ち位置に近いキャラクターです。
ヒロインの愛子や、重要な役割を持つ麻宮さくらも、読者の共感を引き出すというよりは、ストーリーの謎を引き立てる存在という印象。感情移入できるキャラを求める人にはやや物足りない部分もありますが、その分、物語の仕掛けに集中できる構成になっています。
読者の先入観を逆手に取るミステリー
この作品は、ただの「どんでん返し」ではなく、読者の思い込みや先入観を見事に利用してくるタイプのミステリーです。「そういえば、あのシーン、違和感あったかも…」と後から気づかされる巧妙なトリックが仕掛けられています。
特に、終盤で明らかになる真実には衝撃を受けました。それまでの物語の見え方がガラッと変わる瞬間があり、読後感がかなり強く残る作品です。ただ、そうしたどんでん返しを優先するあまり、終盤の展開に納得いかない部分がある人もいるかもしれません。「ここまで積み上げてきたのに、こう終わるのか…」と、少しモヤモヤした気持ちが残る可能性もあります。
どんでん返しが好きなら必読!
『葉桜の季節にきみを想うということ』は、ミステリー好きにはぜひ読んでほしい作品です。驚きの展開と巧妙な伏線回収が詰まった、まさに「読者を試す」タイプのミステリー。特に、先入観を逆手に取るトリックが見事で、読後に「もう一度読み返したくなる」タイプの本です。
ただし、キャラクターの感情描写よりも、ストーリーの仕掛けを重視した構成なので、キャラに感情移入して読むタイプの人には少し合わないかも? しかし、どんでん返しを求めているなら、この本は期待以上の衝撃を与えてくれるはずです。読後のモヤモヤも含めて、「してやられた!」という快感を味わいたい人におすすめの一冊です!
![]() | 葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫) [ 歌野 晶午 ] 価格:902円 |

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